介護コラム

 受験生にとっては、いよいよ入学試験本番の正念場ですね。「サクラサク…」の合格祈願にも熱が入ってくる頃でしょう。かねてから不思議に思っていることのひとつに、国公立大学のセンター試験の受験日の日程の件があります。どうして、わざわざ一年の中で最も寒い一日となる大寒の暦に充てているのだろう。たいてい毎年、試験日当日は積雪に見舞われたりして、交通機関にも影響を及ぼすくらいなのに。皆さんの中にも、新聞に載った試験開始の時刻遅延の記事に目を留められた方もいらっしゃるのではないでしょうか。それはさておき、今月はまずは、頑張っている受験生の皆さんにエールを送ります。

 ちょっと時期尚早ではあるのですが、桜の花をめぐる話をさせていただきます。以前、お世話させていただいていたご家族から「毎年桜の咲く頃となると、介護をしていた義父のことを思い出すのです。」とお手紙を頂戴したことがあります。数年にわたりお嫁さんにあたる方が、苦労話を綴りながら、今はなき義父の姿を思い起こしたときのことが記してありました。ご自宅での介護は決して楽ではなかったのだそうです。でも、心に焼き付いている決して色あせない思い出があるとのこと。寒い冬が終わり、それまで風邪をひかせたらいけないと散歩や外出を控えていて、ようやく春が到来し家の近くの桜のつぼみもほころび始めた頃。今年は義父にとっては最後の花見になるのではないか、いつ連れて行こうか。早くしないと手遅れになってしまうのではないか。でもせっかくならば、満開の桜を見せてあげたいと迷いながら、指折り日を数えていたとのことです。
 花見当日が訪れ、義父が乗った車椅子を押しながら桜の木の下に到着して、しばらく二人で満開の桜を眺めていた折、義父がつぶやいた「きれいだなあ」のたった一言に、こみ上げてくる涙をこらえることが出来なかったのだそうです。

 介護には、どうしても介護する側と介護される側の間に越えられない溝が生じがちです。なかなか相手を理解しきれなかったり、感情移入もあったりで気持ちに整理がつきづらいこともあります。そんな中、二人の間に存在した桜の花は、二人の心を何も云わずにひとつにしたのかもしれません。  
命二つの中に生きたる桜かな  芭蕉

 「サクラサク…」心よりお祈り申し上げます。



  新井教泰さん
アルタクラッセ二子玉川支配人・介護支援専門員

介護付有料老人ホーム
アルタクラッセ 二子玉川

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