「ことば」には色があるのではないかと、最近とみに感じています。原色そのものの色や、中間色。時には異国情緒あふれる色彩など等。色彩はだれが見ても眼で感じるものであることは、どなたも異論はないでしょう。

 ところが、介護が必要なお年寄りや障碍を持った方々とお話をしていて、ふと感じる時があるのです。なぜ?と聞かれても明解にお答えすることはできないのですが、私にはそう思えるのです。 スピリチュアルな昨今のご時世では、言霊とかいって、ことばに宿る何やらスピリチュアルな力について語っているものの本も多く巷に溢れています。ただ、そこまで深遠ではない、感覚のレベルで、やはりことばには色があるのではないかと…。

 ホームの中で、日々交わされていることばの中には、時には指示的であったり、単語だけで意思疎通を図ろうとするものであったりと色々あります。同じことばでも、スタッフが違うと通じたり、通じなかったりと不可解なことが起きます。常に人は言葉を耳で聞き、頭で理解しているわけではなく、晴れた日には晴れた日のことばとして、また曇り空の日にはどんよりとした日のことばとして感じとり、同じことばでも日によって、また誰が話すかによって受け止め方が異なったりするのです。

  つまり、ことばを目で聞いているのではないかというのが私なりの解釈です。  仕事柄、お役所からの通知文を読む機会も少なくありません。決まって、文字が多いのです。たいていは明朝体の白黒文字です。当然ですが、色彩感は得られません。八百屋の軒先のみずみずしい野菜に添えられたカラフルな値札のような字体で書かれていたら、どれだけ読みやすいものかなどと、ぶつぶつ言いながら文字を追いかけるのですが、どうも先に進んで行きません。自分に芸術的センスがどの程度あるかはわかりませんが、やはりセンスなしに思えます。

 インクで記された文字同様、口から発せられることばもセンスによって如何様にも聞こえるのではないでしょうか。論理的に話せば、伝わるというわけでもないのです。説得的に話せば相手は理解してくれるというわけでもないのです。 ここしばらく巷を騒がせるであろう「後期高齢者」ということばは最もセンスがありません。口から発することすら抵抗があります。どうか、せめてバラ色ではなくとも結構ですから、白黒でない思いが伝わってくることばにどなたか色づけしていただけないものでしょうか。もう既にテレビはハイビジョンの時代に突入しているのですから。


  新井教泰さん
アルタクラッセ二子玉川支配人・介護支援専門員

介護付有料老人ホーム
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